チャレンジ!労働法~ミー猫とつばさのまなびネット|1コース - 問題3


- Q3 -

【採用内定の法的性質】
労働契約は、使用者と労働者の合意により成立します。しかし、新卒者を採用する場合、会社が「募集」を行い、それに対して学生が「応募」して「試験・面接」を受け、その後、「内々定」があり、「内定通知または内定式」が行われ、入社式があり、勤務を開始するといったように、実際に勤務を開始するまでに大変長いプロセスを経ます。そのため、その間に何らかの事情で内定が取り消されることもありえます。

採用内定の法的性質の補足説明図








(就活必携労働法-知っておきたい法律と相談窓口-より)

内定取消の法的処理の仕方は、採用内定のもつ法的な意味により決まります。この点について、裁判例は、会社による募集が労働契約の申込みの誘引、学生の応募が労働契約の「申込み」であり、会社からの採用内定通知が申込みに対する「承諾」であり、これら申込みと承諾によって、就労の始期を大学卒業後とし、それまでの間、解約権を留保した労働契約が成立(始期付き解約権留保権付の労働契約の成立)していると判断しています。なお、公務員について裁判例は、辞令の交付(任用行為)がなければ公務員の地位につくことができないとされていることから、内定通知は正式な採用発令を行うための事実上の準備行為にすぎないとして、採用内定の時点では労働契約は成立していないとしています。
内定通知によって労働契約が成立しているとすると、内定期間中の法律関係、例えば、内定通知後に会社からレポートの提出や研修への出席を求められた場合、学生はこれに従う義務があるのかが問題となります。この問題は、会社と学生との間にいかなる合意、認識があったかとういう個別の契約の解釈によって決定されることになりますが、内定期間中は、学生としての地位がありますから、学業に差し支えないかぎりでという条件のもとで、研修などへの出席も義務付けられると考えられます。

【内定取消は労働契約の解約】
使用者には「採用の自由」が認められています。しかし、採用内定以降は解約権留保付きの労働契約が成立しているので、使用者が内定を取り消すということは、留保された解約権の行使をすることを意味しますが、使用者による一方的な労働契約の解約ですから、解雇にあたります。そのため、留保された解約権の行使も、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られることになります。
したがって、内定取消事由については、内定通知等に記載された取消事由であるか否かに関わらず、客観的合理性と社会相当性が要求されることになります。例えば、卒業できない、健康を害して就労できなくなった場合には内定取消も許されますが、会社の採用計画の恣意的な変更などは、客観的合理性が認められず、内定取消は許されません。
なお、厚生労働省により、「新規学校卒業者の採用内定取消等に係る事前通知制度」が設置されており、内定後就業開始までの期間に内定を取り消し、内定期間を延長しようとするときは、あらかじめ管轄の公共職業安定所長または学校等の関係施設の長にその旨を通知するものとされています。また、内定者が内定を辞退することは、民法第627条で認められた「退職の自由」の問題とされ、いつでも自由に内定を辞退することができます(ただし、契約が終了するのは2週間後です)。

【内々定取消】
新卒採用に際し、内定の前に、内々定という過程を挟むことがあります。これは、国や経済団体が、学生の学業に支障がないように、募集要項といった情報解禁を3月、面接解禁を6月、採用内定解禁を10月とするスケジュールを尊重しつつ、早期に採用者を決定したいという事情から生じます。実際には春先から夏にかけて、応募者に採用の意思を内々定として通知し、10月に改めて採用内定を通知するあるいは内定式を挙行するところが少なくありません。それでは内々定は内定とは異なるのでしょうか。内々定では応募者も入社するかどうかを決めていないかもしれないし、企業側も確定的に採用決定をしたとはいえないとして、内々定は内定ではなく、いまだ採用過程に過ぎないとした裁判例もあります。しかし、採用過程であっても、民法1条の信義誠実の原則(信義則)は適用されるとして、会社からの一方的な内々定取消について損害賠償の請求を一部認めました。

【中途採用者の内定取消の場合】
中途採用の場合には、採用が決定してからほとんど間隔をおかずに勤務を開始することが多いため、契約の成立をめぐる争いはあまりないと考えられていました。しかし、採用決定後に前職を退職する場合には、退職の時期によっては、転職先で就労を開始するまでに時間がかかることもあり得るため、新卒採用と同様に採用内定取消の問題が生じることがあります。この場合も、転職先との間で採用内定が成立していれば、転職先が一方的に内定を取り消すことは、解雇と同様に客観的に合理的な理由が必要であり、社会通念上相当と認められない場合は、労働契約上の地位を確認することができると考えられます。他方、新卒採用の場合には、会社の就業規則等に定めた新卒採用者の労働条件が適用されることを前提に採用されるので、採用後の労働条件についての合意の有無が問題となることは少ないのですが、中途採用に際しては、労働条件が当事者間で確定的に合意できていないから労働契約が成立したとは言えないとした裁判例もあります。少なくとも賃金についての合意が成立していないと、労働契約の成立とは言えず、労働契約締結過程の問題として取り扱われることがあります。労働契約締結過程においても信義則は適用されますので、中途採用予定者の内定取消の経緯によっては、信義則違反の責任を追及される場合があります。
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