【労働条件等の明示】
労働契約で決めたことについては、使用者と労働者の双方が契約内容を守らなくてはなりません。それは派遣労働でも同様です。派遣労働についても、労働契約を結ぶ際に使用者は、契約期間や賃金、労働時間その他の労働条件について書面等で明示しなければならないという労働基準法第15条第1項が適用されます。
また、派遣労働の場合、労働契約を締結している使用者(派遣元事業主)と指揮命令を行う派遣先とが異なるため、労働者派遣法は、派遣元事業主は派遣労働者が派遣就業を始める前に、派遣先での就業条件(業務内容、派遣先の事業所の名称及び所在地その他就業の場所並びの組織単位、指揮命令者、派遣期間及び派遣就業をする日、その組織単位における期間制限の抵触日、派遣就業の開始及び終了の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日その他就業時間に関する事項、安全及び衛生に関する事項、派遣元及び派遣先の苦情処理の申出先、派遣元責任者、派遣先責任者、福利厚生施設の利用等、派遣契約解除の場合の措置、紹介予定派遣の場合には職業紹介により従事すべき業務の内容及び労働条件等)を書面で明示しなければならないと定めています(労働者派遣法第34条)。
また、派遣元事業主が派遣労働者と派遣労働契約を締結するに当たっては、派遣労働者として雇い入れる旨を明示する必要もあります(労働者派遣法第32条)。
厚生労働省では「労働条件通知書」および「就業条件明示書」モデルを活用して、労働条件等を明示するようにすすめています。モデル労働条件通知書に含まれるのは、契約期間(有期労働契約の場合には更新の有無、更新の判断基準等)・就業の場所・従事すべき業務の内容・始業および終業の時刻・休憩時間・就業時転換・所定時間外労働の有無・休日・休暇・賃金・退職に関する事項・その他、社会保険の加入状況や雇用保険の適用、労働契約の更新の有無や判断条件についてです。
モデル就業条件明示書には、業務内容・就業場所・組織単位、指揮命令者・派遣期間・就業日および就業時間・安全および衛生・時間外労働および休日労働・派遣元事業主責任者・派遣先責任者・福利厚生施設の利用等・苦情の処理と申し出先・派遣契約解除の場合の措置が含まれています。
個々の派遣労働者に明示される就業条件は、労働者派遣契約の定めた就業条件の範囲内でなければなりません。
就業条件の明示の方法は、①書面の交付の方法、当該派遣労働者が希望した場合であれば②ファクシミリを利用してする送信の方法、③電子メール等の送信の方法とされています(派遣法施行規則26条1項)。
なお、令和6年4月1日からは、労働基準法第15条第1項前段の規定に基づいて明示しなければならない労働条件の範囲が追加されます。
まず、労働契約法第18条第1項に規定する通算契約期間又は期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の更新回数の上限を定める場合には、労働条件通知書において明示しなければなりません。
また、就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲について、今後の見込みも含め、当該労働契約の期間中における就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を明示しなければなりません。
さらに、有期雇用の派遣労働者について、その契約期間内に、労働契約法第18条に基づく無期転換申込権が発生する場合には、使用者は、労基則第5条第1項に規定するもののほか、無期転換申込みに関する事項及び無期転換後の労働条件(同項第1号及び第1号の3から第11号までに掲げる事項)を明示しなければなりません。
【派遣労働者に係る雇用制限の禁止】
なお、労働者派遣法第33条では、派遣労働者の雇用の促進を図るため、労働契約を結ぶ際には、正当な理由なしに派遣労働者が派遣契約終了時に派遣先に雇われることを禁止する内容を入れることを禁じています。また、派遣先と派遣元事業主が結ぶ労働者派遣契約書にこのような内容を入れることも同様に禁じられています。仮に、これに反する契約,あるいは合意がなされたとしても、そのような契約、合意は無効であると考えられています。
また、労働者派遣法では派遣労働者の雇用の安定を図るため、派遣元事業主は派遣労働者の希望を考慮して労働契約の期間を労働者派遣契約における派遣期間と合わせるなどの配慮をし、派遣先は、労働者派遣契約における派遣期間について、実際に労務の提供を受けようとする期間を考慮して、可能な限り長く定めるなどの配慮をするようにとも示しています。