【賃金支払いの5原則は派遣労働者にも適用】
労働契約を結んだ会社の指揮命令で働く一般的な働き方とは異なり、派遣労働では指揮命令をする派遣先と賃金を支払う派遣元事業主とが別であるために、さまざまな問題が生じることがあります。派遣先が派遣料金を支払わないということで、派遣元事業主より賃金が派遣労働者に支払われないというのもそのひとつです。しかし、理由はどうであれ使用者(派遣元事業主)は、派遣労働者が実際に働いた分の賃金を支払わなければなりません。【1コースの問題9参照】
派遣先と派遣元事業主との派遣料金や支払い方法に関しての取り決めは、労働者派遣契約に基づき原則自由となりますが、派遣元事業主と派遣労働者との賃金の支払いに関しては、労働基準法、最低賃金法などの厳守が求められます。そのため、たとえ派遣先が派遣料金の滞納をしていたとしても、派遣元事業主は使用者として派遣労働者に賃金を支払わなければなりません。
また、派遣労働者が自分の都合で退職するなど、派遣労働者の故意又は過失により派遣元事業主に損害を与えた場合でも、派遣元事業主が一方的に賃金と損害賠償金を相殺することは許されず、賃金は賃金として労働者に支払わなければなりません(労働基準法第24条第1項の賃金全額払いの原則)。
【賃金支払いがされない場合】
賃金の支払いがされない場合、賃金は3年間請求しないと時効(労働基準法第115条)となるため、派遣労働者は派遣元事業主に賃金支払いを請求して、支払いの時期や金額を確定する必要があります。賃金の全部または一部が支払われない場合、使用者である派遣元事業主は30万円以下の罰金刑に処せられます(労働基準法第120条、第24条)。また、賃金が支払われない場合、労働者は本来支払われるべき日の翌日から、支払いが遅れている期間について、年利3%の遅延損害金を請求できます(民法第404条2項)。そして、既に退職している場合は、退職の日までに支払期日が到来している賃金については退職の日以降に、また、退職の日以降に支払期日が到来する賃金については、その支払期日以降について、年利14.6%の遅延損害金を請求できます(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項、賃金の支払の確保等に関する法律施行令第1条)。なお、解雇予告手当、休業手当、割増賃金、年休手当が支払われなかった場合は、裁判所は労働者の請求により、未払額と同額の付加金の支払いを命ずることができることが労働基準法第114条で定められています。この場合、付加金の額は裁判所の裁量で決定されます。もっとも、裁判所が命じる前(事実審の口頭弁論終結時まで)に使用者が未払金の支払いを完了し、労働基準法違反の状況が消滅したときには、裁判所は付加金の支払いを命じることができなくなります(最判平成26年3月6日・甲野堂薬局事件)。