【セクシュアルハラスメントとは】
セクシュアルハラスメントとは、相手方の意に反する性的な言動への対応によって、仕事を遂行する上で一定の不利益を与えたり、就業環境を悪化させることをいいます。セクシュアルハラスメントには、性的な言動に対する労働者の拒否や抵抗などにより、その労働者が解雇、降格、減給、昇進・昇格の対象からの除外、客観的にみて不利益な配置転換などの不利益を受ける対価型セクシュアルハラスメント、性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなり、労働能力の発揮や就業する上で見過ごせない支障が生じる環境型セクシュアルハラスメントがあります。この場合の労働者には、正社員だけでなく、パートタイム労働者や、契約社員、派遣労働者なども含まれ、職場とは労働者が業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外も含まれます。
【派遣元・派遣先が講ずべき措置】
事業主は、職場においてセクシュアルハラスメントが起きないよう、雇用管理上必要な措置を講じなければならないと男女雇用機会均等法11条で定められています。派遣労働においては、事業主としての責任を負うのは通常は派遣元事業主ですが、セクシュアルハラスメントについては、派遣元事業主だけではなく派遣先も雇用管理上および指揮命令上必要な措置を講じなければならないとされています(労働者派遣法47条の2)。
事業主が講ずべき措置については①就業規則にセクシュアルハラスメントに関する事項を規定し、資料を配布したり、研修を行うことで、普及・啓発をはかること、②相談・苦情窓口を定めること、③セクシュアルハラスメントが生じた際に、速やかに事実関係を確認し、適正に対処すること、④労働者のプライバシーを守ること、その旨を労働者に周知すること、⑤相談・苦情を申し立てたことや事実関係の確認に協力したことを理由に、労働者に対して不利益な扱いをしない旨を定め、労働者に周知・啓発すること、と指針により定められています(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年10月11日厚生労働省告示615号))。
【損害賠償責任】
セクシュアルハラスメントの加害者は、セクシュアルハラスメントという「不法行為」を行ったとして、被害者が被った損害を金銭で賠償する「不法行為責任」(民法第709条)を問われることがあります。また、加害者を雇用している使用者も無関係ではなく、「使用者責任」(民法第715条)や「債務不履行責任」(民法第415条)などの損害賠償責任を問われることがありえます。
(参考)各種ハラスメント
セクシュアルハラスメントのみならず、派遣元事業主と派遣先とは、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(いわゆるマタニティハラスメント(マタハラ)やパタニティハラスメント(パタハラ))や、パワーハラスメント(パワハラ)の防止措置を講じなければなりません。
派遣労働者が派遣先の上司や同僚からハラスメントを受けることがないよう、派遣元事業主も派遣先も、ハラスメントが許されないことをあらかじめ周知し、相談体制を整備するとともに、ハラスメントを受けたとの申出があったときは、当事者から十分に事情を聴取し、再発防止のための措置をとることが求められます。
○妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(いわゆるマタハラ・パタハラ)
男女雇用機会均等法第11条の2は、「事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないとします。」また、育児・介護休業法第25条は、「事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」として、マタハラ防止措置を事業主に義務づけています。この事業主には派遣元事業主のみならず、派遣先も含まれます。
○パワーハラスメント
職場におけるパワーハラスメントとは 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第30条の1第1項において、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」ものと定義されています。
具体的には、(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)、(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)、(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制。仕事の妨害)、(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)の6つの類型が典型的なものです。
○カスタマーハラスメント
なお、近年、問題となっているのが、カスタマーハラスメントです。これは、顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、 当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるものを指します。「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第6号)では、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)に関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい旨、また、被害を防止するための取組を行うことが有効である旨が定められました。
厚生労働省では、令和4年2月25日に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成して、事業主に、相談体制の整備、メンタルヘルス相談などの被害者対応、マニュアル作成などの被害防止の取り組みを求めています。