チャレンジ!労働法~ミー猫とつばさのまなびネット|2コース - 問題20


- Q20 -

【労働者派遣と請負の違い】
「労働者派遣」とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいいます(労働者派遣法第2条第1号)。つまり、労働者と労働契約を結んだ会社(派遣元事業主)が、労働者派遣契約を結んでいる依頼主(派遣先)へ当該労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令に従って働く、という働き方をいいます。これに対して「請負(業務処理請負)」とは、請負業者が注文主と請負契約を結んで仕事を引き受け、請負業者が雇用する労働者を自ら指揮命令して、請負業者の責任で仕事を完結させるものです。請負の場合、注文主は、業務の遂行に関する指示や労働時間管理に関する指示などをすることができないことが、労働者派遣と大きく異なる部分です。

【偽装請負とは】
労働者派遣を行う場合、厚生労働大臣の許可を得るなど、労働者派遣法の規制を守ることが必要となりますが、事業主がこうした労働者派遣法の規制を嫌って、形式的には請負契約の体裁をとりながら、実際には注文主が労働者に対して仕事の指揮命令を直接行ったり就業時間や場所を直接指示したりするなど、実態として労働者派遣を行っているというケースがみられます(実態は労働者派遣でありながら、形式は請負であると偽装するので、「偽装請負」と呼ばれます)。偽装請負は、労働者派遣法、職業安定法に違反します。また、偽装請負では、労働基準法や労働安全衛生法等に定められた派遣元事業主(受託者)・派遣先(発注者)のさまざまな責任があいまいになってしまうため、労働者の労働条件や安全衛生が十分に確保されずトラブルが起こりがちなので、さらに注意が必要でしょう。
なお、派遣先が違法派遣と知りまたは知らなかったことに過失があるときは、派遣先は当該派遣労働者に対し、その時点における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます(労働者派遣法第40条の6第1項)。偽装請負も違法派遣ですから、派遣先が偽装請負と知って派遣労働者を受け入れている場合は、派遣先がその派遣労働者に労働契約の申込みをしたものとみなされます。

【労働者派遣と請負の区分けに関する基準】
労働者派遣と請負との区分けに関する基準については、次の点に留意する必要があります(「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」昭和61年4月17日労働省告示37号)。
これら労働省告示による基準に該当しない場合には、請負ではなく労働者派遣を行うものと判断されます。
・労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
・労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。
・労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
・労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
・労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。
・労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。
・業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。
・業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
・自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。
・自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。
また、上記の基準をいずれも満たす場合であっても、それが労働者派遣法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働者派遣を行うことにあるときには、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができないとされています(同告示第37号3条)。

【偽装請負の場合の労働契約申込みみなし制度】
労働者派遣法第40条の6第1項は、①派遣労働者を禁止業務に従事させること、②無許可事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること、③事業所単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること、④個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること、⑤派遣法等の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、派遣法26条第1項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること(いわゆる偽装請負)といった違法派遣の場合、派遣先が派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす労働契約申込みみなし制度を設けています(2コース問1、問15参照)。ただし、派遣先が、その行った行為が禁止されていることを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかつたときは、この限りでないとします。
⑤の偽装請負については、派遣先の脱法目的も要件となっています。この点につき、労働者派遣法第40条の6第1項5号のリーディングケースである東リ事件(大阪高裁平成3年11月4日判決、最高裁令和4年6月7日上告不受理決定)は、偽装請負(5号)の場合には,「労働者派遣の指揮命令と請負の注文者による指図等の区別は微妙な場合があり,請負契約を締結した者が労働者派遣におけるような指揮命令を行ったというだけで,直ちに前記民事的な制裁を与えることが相当ではないと考えられることから,特に偽装請負等の目的という主観的要件を付加したものと解される。このような主観的要件は,労働者派遣の役務の提供を受ける者が自らこれを認めるような場合を除き,通常,客観的な事実から推認することになると考えられるが,偽装請負等の目的という主観的要件が特に付加された趣旨に照らし,偽装請負等の状態が発生したというだけで,直ちに偽装請負等の目的があったことを推認することは相当ではない。」としつつ、「しかし、日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者又は当該労働者派遣の役務に関する契約の契約締結権限を有する者は、偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認する」とし、製造業の現場で長年にわたり偽装請負で働いていた労働者について、労働契約申込みみなし制度により派遣先との労働契約の成立を初めて認めました。すなわち、偽装請負等の状態を認識しながら,これを改善することなく組織的に偽装請負等の状態を継続していたことを推認させるものということができとして、労働者派遣法40条の6第1項ただし書の善意無過失が認められる余地はないとしました。
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